建築家には、大きく分けてふたつの大事な仕事があります。
ひとつが「設計して図面を書く」こと。
そしてもうひとつ重要なのが「現場監理」です。
現場監理は簡単に言うと、書いた図面に沿って、きちんと工事が行われているかを工事の現場に行って確認すること。これは「設計したものに責任を持つ」大切な仕事だと私たちは考えています。
設計者と、工事を行う職人さんとは上下関係ではなく、対等な関係で仕事をします。また、私たちは建主さんにいちばん近い存在として、職人さんと住む人とのあいだに入り、架け橋の役目も担っています。
いいものをつくるにはチームワークが大切ですし、みんなの気持ちがひとつの方向へ向かうように、感謝の気持ちで誠実に対応してしていかなければなりません。現場監理の意味は、職人さんたちの仕事ぶりをただこまかくチェックして見張ることではありません。設計図よりも、さらに建物を良くするための仕事なのです。
現場で五感を研ぎ澄ますと、紙の上だけでは見えなかったことが、必ず見えてきます。それはだれも気がつかないようなほんの小さなことですが、最後の最後まであきらめないで調整していくと、建物がすみずみまで”美しく”なります。空気が調和している、神経が行き届いているゆえの美しさを追求するのもまた、大切な仕事です。
そして、その非常に小さな調整は「設計した本人が現場に立つことでしか」わかりえないことなのです。